2023年4月3日
僕がバイトしてるラーメン屋、あまり客が入ってない。
昔は割りと繁盛してたんだけど今は新興のラーメン屋に食われちゃって。
だって今どき醤油ラーメンしか売らないって時代逆行してるでしょ。
今は豚骨こってりの時代だよどう見ても。でも大将は頑固で人の言うことなんか聞かないからな。困ったもんだ。
でも僕は勇気出して言ってみた。店のためだ。
「ねえ大将。もうちょっと味のレパートリー増やしたほうがいいと思うんですけど」
大将は僕も見もせずに吐き捨てるように言った。
「別にいいんだよこれで」
ああやっぱりね。素直に人の言う事聞く人じゃないしね。予想通りの反応。でももうちょっと言ってみる。
「でもね大将、売上落ちてるし醤油以外にもメニュー増やしたほうがいいと思うんですよ。駅前のラーメン屋だってつけ麺とか始めたみたいですし。」
「いいって言ってんだろ?これで」
食い気味で来た。相変わらずこっちを見もしない。何も考えてないのかこの親父。腹たってきた、こっちは店のためを思って言ってんだぞコイツ。
「どうしてですか?理由を言ってくださいよ。メニューを増やすだけでしょ?時代を追っかけないと結局時代遅れになって店潰れちゃいますよ?」
あんたどうせ何も考えてないんだろ?自分の意地のみでメニューも増やさないんだろ?先も読もうとしないで何が経営者だこの親父。
「あのな」
大将は初めて僕の方を見た。
そして食って掛かるように言った僕にゆっくりとこう言った。
「遅れてる針時計なら絶対ダメだ。だけどな、止まってる針時計なら日に二回だけは合うだろうよ?」
あーあ、うまいね。この親父。どうにも。