2022年11月4日
2003年5月。
ひっそりと一体のロケットがJAXA内之浦から打ち上げられます。
その圧倒的な功績により、後の熱狂的な帰還時に比べて全くひっそりと…です。
その名は探査機はやぶさ。
なぜひっそりなのかとは当時の事情が色々あったのですがここでは触れません。だから、ごく一部の国民以外には全く期待されない出発でした。
そんなはやぶさと、そのはやぶさを支えた技術陣のお話。
直線距離で言えば、地球から冥王星をも超える60億キロもの距離を一人で旅してようやく帰還したはやぶさ。
あとはサンプルカプセルを放出して、自分は大気圏で燃え尽きるのみ。
その寸前、はやぶさの運用チームは、はやぶさに地球の写真を撮ることを命じるのです。
もう何万枚も取り尽くされたであろう地球の写真なんかを何故今さら撮るように命令したのか。
その写真に科学的な価値はなく、もう燃え尽きるしかないはやぶさの動作実験でもない。
では何故か。
それは数々の致命的トラブルに見舞われながらも、それでもぼろぼろになってやっと帰ってきたはやぶさに地球を見せてあげたかったから。
7年ぶりのふるさとの姿を。
技術的にはどうやってもはやぶさを救うことが出来ない。もう燃え尽きるしか他はない。それならばせめてひと目だけでも、お前はちゃんと地球に帰ってきたんだよ…と。
優秀な技術者はロマンチストなんだなというお話でした。